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「自信のない男」


いつも面白く読んでおります「BAR BOSSA通信」で「自信のない男」という興味深いエントリがありました。かっこいいバーで「牛丼大盛り!」なんて言ってみて内輪ウケを続けようとするグループ客にどう対処するか、また、そういうことを言う人はナゼそうなのかという、心当たりのある人は泣いちゃうんじゃないかというキビシイお話です。続きは「BAR BOSSA通信」でどうぞ。


その記事を読んで思うところをすこし言ってみたいのですが、冒頭のグループ客の話にも後段で出てくる男性にも共通する問題点は、店の人や他の客またはお連れさんに対する「傍若無人さ」であると言えましょう。こういう自分(たち)の内側に籠もるような態度はどこから来るものなのでしょうか。「BAR BOSSA通信」さんでは「自分に自信がないからだ」と結論付けていらっしゃるのですが……


彼が一人ではないという観察は大きなヒントだと思います。おそらく彼は一人なら、この記事で話題にされているような言動をとらないし、それ以前に一人では知らない店には行かないかもしれない。お連れがいればこその狼藉なのでしょう。つまり、これまでに経験のない未知の事態に対する緊張と拒絶感が、連れがいることへの安心感・甘えとあいまって傍若無人な言動として表れるのだと思われます。もう少し正確に言うと、それは「未知の事態」との出会いに対し、彼の態度が「緊張」から「拒絶」になった瞬間なのではないでしょうか。


なんか読みにくいことを書いた気がするので言い直しますが、グループ客の例で言えば、

 (1) 来たことのないような洒落た店だ
    ↓
 (2) 何を頼めばいいのかわからない、恥をかくかもしれない
    ↓
 (3) 先手を打って自分から「明らかに恥ずかしいこと」を言って冗談にしよう
    ↓
 (4) 牛丼をオーダー
    ↓
 (5) みんな大ウケ


これが彼の考えの大筋であり、(1)(2)と来て(3)の段階ではすでにお店のことも他の客のことも念頭から消えています。未知の事態と付き合ってみようという気持ちはもうどこにも見当たりません。店側がこういう人(たち)の機嫌を取ってあげると、こういう人は味をしめて何度でも繰り返しますから、白けて見せたり早く追い出すというのは見識であるなあと思います。

…なんだか上の図式を眺めていると、こういうのは男性特有の考え方であるような気がしてきました。こんな女性はいない気がする。いや、いるかな…? ともあれ鍵は(2)だろうと思います。ここで彼が予感しているのは、無知をさらして店の人と連れに笑われ馬鹿にされることへの「恐怖」です。その恐怖の根っこにあるのは、遊びでも何でも知ってる「格好いい男でありたい」という見栄ですね。その見栄が変な働き方をして、彼を場違いで失礼で「格好いい」とは逆方向の言動へと駆り立てているのです。

これがなんとも恐ろしいのは、その発言をした時点で彼はいつの間にか「それでいい」とすっかり思い込んでいるということです。よって、下手に注意するとそれはそれで「やっぱり恥をかいた」ということになって、彼は怒るでしょう。元記事に「マジメな顔で」「真剣な表情で」「怒った顔をして」とあるのは、先に怒って相手の非を責めることで、彼には怒るタイミングを与えないようにしているのだと思われます。


ところで、彼の見栄や恐怖については、私も我が事としてあるいは身近な事として理解できます。要するにこれは「努力や勉強をせずに格好をつけたい」という気持ちだからです。それは子どものころ誰しもが考えることでしょう。

だけど大人になってゆく過程で学びましたよね。特別なことじゃなく、ごく当たり前のことです。初めてやることはうまくできないだとか、うまくできるためには練習しなきゃいけないだとか、何度もやってると段々できるようになるだとか。

本気で努力するとどうなるかとか。努力してうまく行ったら、あるいはうまく行かなかったらどんな気持ちになるとか。本当に格好いいのはどういう奴かとか。学んでますよね。今だって日々学んでる。


まとめて言うなら、その見栄や恐怖や「努力せずに格好つけたい」という気持ちは、それを克服することを覚えなきゃいけないんですよ。そのための訓練を受ける機会は、誰の人生にだっていっぱいあって、これまでにもいっぱいあったんです。学校だってそうなんです。「仕事」だってそうなんです。だったら、お店に行くことだってそうなんですよ。

生まれて初めて何かをするとき、その1回1回が学ぶ機会であり、時や場合によっては見栄と恐怖との戦いであるということなんです。そしてそこで見栄と恐怖に負けてしまった場合が、外見的には場違いなふざけ方だったり、失礼でふてくされたような、あるいはガキっぽいかたくなな態度になっちゃうことがあるということなんですね。


ね、どんな場面でもリラックスして楽しむことができるような、そんな人に私は憧れますけど、そうなるためのヒントもこの記事には書かれているじゃないですか。

知らないことは率直に「知らないんです」って言えばいいんですよ。それがいちばん格好いいんです。知らなければ「すみません、知らないんで教えてください」って言いましょう。ホントにそんだけですよ。相手が誰だろうが教えを乞えばいいんです。そしたら笑う人は笑うだろうし、教えてくれる人は教えてくれます。教えてもらえりゃしめたもんです。

誰だってはじめは知らないんです。そうでしょう。知識として知ってたって、その場でできなきゃ知らないんですよ。そして本当の意味で「できる」ようになるためには、やってみて練習して慣れるしかないんですよ。ホントにそんだけなんですよ。誰だってそうなんですよ。


「BAR BOSSA通信」さんが「仕事」を例にとってこの話をしているのは、仕事こそは人の生活を成り立たせるものだから、仕事に対する態度にはその人の全体像があるていど現れると思っていらっしゃるからだと思います。

つまり仕事に真剣に向き合っているなら、仕事のことで分からないことをおろそかにしたり誤魔化したりはしないだろうし、そういう基本態度は生活のあらゆる場面で自然と出てくるものだと、これまでの経験から知っていらっしゃるのでしょう。だったら他人がきちんと仕事をしている場所でああいった傍若無人な態度は、いくら客でも、ひどいんじゃないですか、とおっしゃっているわけです。


私はさ、自分の懐具合に応じて、安い屋台みたいなトコでもちょっと高級なトコでも、そこで気分よく楽しく飲み食いできる客でいたいなと思います。初めて行った店でもなるたけ好きになって、楽しく飲んで食ってお世辞でも「また来てね」って言われて帰りたいですよ。

…別にそんなことがいつでもどこでもできてるなんて言いませんよ? だけど基本の態度はそうでありたいなあと思ってます。知らないことは知らないと言いたいな。いや人生は難しい。ほんとに難しい。いやいや。

すいません、ちっと酔ったようです。ではまた。




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