これはすごい。すごい本だ。かつての橋本治だってここまでは言わなかったように思う。本書はこれまで誰も行ったことのない極北にたどり着いているのではないだろうか。これは、著者が学者でなければ(学者であっても)変態呼ばわりされると反論がしにくい話題(というか単なる露悪趣味の露出狂)であり、少なくともフェミニズムを深く理解しまた理解していることをこれまで十分にアピールしてきた著者だからこそここまで踏み入ることができたのだと言っていいかもしれない。そう、これはまさにこの著者が書くべき本だったのであり、センシティブな問題に真正面から取り組んだその勇気と根性は見る者を感動させるであろうつーか感動した。
私はこの森岡先生を学生のときに見たことがあって(講義のゲストでいらしていた)、生で見た印象は「凄いような美男子でムチャクチャ頭いい人だ」というものだった。その印象をこれまで10数年どこかに持ち続けてきたからこその衝撃なのだろうか。矢継ぎ早やに繰り出される「私の射精前後の過程」「私のオナニー」「ミニスカ大好きパンチラはもっと大好き、つかミニスカのパンチラが好き」「制服萌え~」「私のロリコン心について」といった勇気に満ちた証言の数々には積極的に支持されるべき迫力が感じられる。勇者・森岡が研究者である前に少なくとも証言者として勇敢であることだけは世の男性諸氏は認めざるを得ないだろう(注・カギカッコ内は
私の勝手な意訳であり本文の記述の引用ではありません)。
さらに、この本の著者近影はなんというか、爽快な禿げっぷりが清々しくて私は驚いた。本文と並ぶもうひとつの見どころであろう。
本書のあまりの面白さに、バーでカウンターの端っこに座ってなおも続きを読んでいたら「めっちゃ面白がって読んでるオーラ」が出ていたのか「何を読んでいるのか」と次々に声がかかる。さる常連の女性(猿の常連ではない)に本を渡して読んでいたところまで軽く説明してみると「面白そうだから買ってみる」と言っていたような気がするが、そこから急に酔いが回って気がついたら日本酒の利き酒ごっこをして遊んでいたので確信が持てないのは仕方がないよねと思った。
さて著者の論考は中盤から「男性は自分の肉体が嫌いな人が多いのではないか」という話になる。これもけっこう頷ける話である。現代日本の男性のうちで男性の肉体の美を賞賛することが普通に許されるのはほとんどホモ、ゲイの世界の人限定であろうから、ということはホモ界の言論にふだん接することのない男性にとっては、男性の肉体を素晴らしいものとして肯定する言説なり視点なりが与えられる機会はとっても少なくて、女性の肉体への憧れだけがふんだんに与えられるのだから、男が男の体を嫌いになるとともに自分の体も嫌いになる傾向が醸成されていて不思議ではないわけだ。
そこでラテン・ミュージックですよ。唐突だけど。ラテン音楽を薦めたいのである。なぜかといえばラテン世界には男性が公然と男性美を肯定する伝統があるからであるつーかなんかそんな気がしただけである。次に示すジャケ写を見て欲しい。
■ ← 押忍
これはサルサの巨匠・大スターであるチャーリー・パルミエリというピアニストだが、この昂然たるオッサンぶりを見るがよい、そしてこんなふうになるがよい、男ども、と思うのである。またはこんなふうになりたい、と私は願うのである。ひげもじゃで、腹はでっぷり突き出し、だけどお洒落で、人に好かれるような男になりたいなあと、ときに思うのである。
そこでとりあえずラテン化計画発動ですよ。音楽はラテンばっか聴く、服もそんな感じにする、サルサ・クラブとかに行ってみる、なんなら帽子もかぶるしダンスも習おうじゃないの、似合わなくても。という思いつきを口にしてみて今日はおしまいなのであった。
あと、この本を読むと「ああ、おれもあたしも自分の欲望を赤裸々に書いてみなさんの前に晒したい」と思う人が出て来そうな気がするけど、それであんまり長い文を書くのはやめたほうがいいと思う。やるならせめて伊丹十三がやったように座談会にでもしないと、客観がとれなくなってキモ自滅するんじゃないかと思う。思うというか、試しに書いてみて読み返したらキモくて死にそうになりましたので念のため申し上げます。というかダメだおれキモすぎるウワーッ!ワーッ!!
 | 女たちよ!男たちよ!子供たちよ! (文春文庫 (131‐5)) (1984/12) 伊丹 十三
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